①導入【危険走りと安全走り】
⑴”危険走り”は肉離れの根源
いきなりですが問題です。どちらの走り方がより肉離れを起こしやすいでしょうか?
答えは左の走り方です。なぜそうなるのか、危険な走りの原因がこの記事を読めばわかるようになります。
肉離れ、又の名をミートバイバイ。
可愛らしいネーミングとは裏腹に、陸上選手が最も出会いたくない、でもよく出会っちゃうそんな怪我ではないでしょうか。
肉離れが癖になって全力で走るのが怖い人、いつ肉離れが起きるかそもそもわからない人、そもそも肉離れの気をつけ方を知らない人。
肉離れが起きる原因とそれを防ぐ根本的解決の仕方がわかれば大幅に怪我のリスクを減らすことができます。
根本的問題の解決とは、事後の対処ではなく、事前の予防です。
これができる選手は非常に少ない。だからこそたくさんの選手に読んでほしい。そんな熱い思いを込めて今回記事を書きました。もしこの記事を読んだ方の知り合いに、これから紹介する危険な走りをしているお友達がいたらぜひこの記事を紹介してあげてください。
それでは体の防衛チャンピョンになって陸上ライフを楽しみましょう!
⑵
- ・肉離れの仕組み 論文
- ・危険走りと安全走りの仕組み
- ・危険走りと安全走りの解説
- ・まとめ
⑶この記事を読むと良い人
- 肉離れの原因を解決したい人
- 肉離れしにくい走りを会得したい人
- 体に優しい走りをしたい人
②肉離れの仕組み 論文
肉離れとは、筋肉が引き伸ばされると同時に収縮する時に起こる筋肉の部分断裂です。
走る際によく起きるタイミングとして、地面に足が地いた瞬間に起こります。例えば、ダッシュをしようとするときハムストリング(太ももの裏の筋肉)はぎゅっと収縮しますが、ここから走り出して膝を伸ばす動きをすると、収縮している筋肉は無理やり引っ張られる状態になります。この時収縮する筋力が引っ張られる筋力に負けることで肉離れが起こります。(参照1)
いわゆるパワーを出そうと収縮しているハムちゃん筋肉と外に引っ張ろうとする腱が綱引きをして、真ん中の綱が切れちゃったという状態です。
ということは引っ張られてしまった時に柔軟に筋肉が伸びない”筋肉の硬さ”が肉離れの原因では!?と思うかもしれません。しかし実際には筋肉が硬いから肉離れが起きるという科学的な根拠は見つかっていません。
※ただ硬くても伸び縮みしやすい柔軟性を兼ね備えている筋肉は短距離選手においてはパフォーマンスが高くなることが研究からわかっているため、ストレッチは無意味だ!と思うのではなくアップの際、動的ストレッチなどで適度に動かしつつ柔軟性を持たせるようにはしましょう。(参照2)
では肉離れの本当の原因は何なのでしょうか?
③危険走りの仕組み 写真&図解とか
危険走りが引き起こすハムストリングの肉離れの原因、それは、”接地の仕方”にあります。
体の前に足を接地すると筋肉が固まった際にその筋肉を引っ張る腱と関節が過度に伸展してしまう、これが肉離れの最大の原因であり、危険走りの正体です。
国士舘大学大学院スポーツ・システム研究家小林等の研究論文によると
「短距離選手を対象にした結果から、ハムストリングの肉離れ経験者は、遊脚期において下腿の前方への振り出しが大きく、接地期では足が体の前方に接地する傾向にあると報告している」(参照3)と述べています。
これはつまり、足を前に大きく出しすぎて接地位置も体の前に出しすぎると肉るで!ということを示唆しています。
ここで体の前方ってざっくりしすぎててどこやねん!じゃあどこに接地するのがええねん!という疑問が出てくると思います。
それは次の ”安全走りの方法” で見ていきましょう。
④安全走りの仕組みと方法
肉離れを起こさない理想の安全走り接地の方法は、
ズバリ ”体のほぼ真下” に接地することです。
※厳密に真下という表現は、走りのフェーズなどで変わってくるため少し違うのですがまずここでは、中間疾走からフィニッシュ局面までのフェーズにおいて真下への接地と考えてください。走りのフェーズで真下の意味が変わる詳細は後述します。
接地を真下にすることで、足を前に出して接地した際よりハムストリングが過度に伸びないため、前述の肉離れの仕組みから考え怪我のリスクがかなり軽減します。
さらに真下に接地することは、お尻の筋肉をより収縮させ地面からの衝撃を受け止める部位がハムストリングからお尻で行えるようになります。
なんと接地位置を真下にするだけで、
ハムストリング 筋肉が緩和し、ハムストリングを引っ張る健側の引っ張りも弱くなり、肉離れの仕組みであったハムと健の綱引きがなくなるのです。
これが安全走りのメカニズムです。
また走りを止める際のブレーキのかけ方にも細心の注意を払う必要があります。
☆危険な止まり方
こんなブレーキのかけ方をみたことはないでしょうか?
いきなり接地足を前に出してブレーキをかけてしまう止まり方です。
これまでの肉離れの仕組みから、この止まり方が危険なのは火を見るより明らかです。
しかし私が現役時代、以外にも多くの選手がこのような止まり方を平気でしている印象でした。
ここで安全走りのメカニズムを応用して、なるべく真下に接地しながらブレーキをかけていく止まり方をしてみましょう。
足を前についてブレーキをかける際は、
足からハムストリングスまでが、つっかえ棒のような役割になり止まっていたところを、真下で接地することで体の中で最も大きい筋肉であるお尻を使ってブレーキをかける事ができ、同じ衝撃でも受け止める筋肉量が違うこともあり怪我のリスクを抑える事ができます。
☆安全な止まり方
⑵使われている筋肉
もちろん大臀筋(体の中で一番大きなお尻の筋肉)
⑶ポイント
ブレーキをかける際、接地位置が前より真下だとブレーキの力は弱くなります。そのためブレーキ力を増すために、足を出す回数を増やしてブレーキをかけていきます。これで安全かつスピードを緩めるブレーキのかけ方ができます。
ぜひ一度行ってみて頂けると幸いです。
少し話は脱線しましたが、
ここまでの話を聞いて、中間疾走からフィニッシュまでの安全な接地の仕方は”真下”でわかったけど、「加速局面」での接地位置は、真下に!と言われて何かしっくりきませんよね?だって加速局面(スタートから体が起きるまで)は体が前のめり(前傾)の状態で走るのにその真下ってどこなん?となりませんか。
体が立って走っている時よりも、顎の下? 腰の下?となってしまい真下という説明だけでは、位置が特定できません。
ここで冒頭で話した”接地位置が真下”という定義が
走りのフェーズなどで変わるため少し違うといった理由です。
では、加速局面(説明上特に)での接地位置はどう説明したらよいでしょうか。
こちらの図をご覧ください
※100m世界記録保持者ウサインボルト選手の練習風景です。
走りの進行方向に斜めに倒れる体の軸があります。
この軸のラインに肩・膝・母指球が重なる状態を「パワーポジション」と呼び人間の力が最も発揮される姿勢と言われています。
この3ポジションが1つのライン上にあるように、接地位置(母指球ポジション)が決まります。
なのでスタートから加速局面において、上半身は自ずと前傾した状態から始まるため、前傾した肩と膝の重なる延長線上に正しい接地位置が見えてきます。
実際には他のフェーズでも”真下”ではなく、パワーポジションの軸のラインの延長線上に接地というのが正しい接地位置になります。
※説明が長いため、直立の走りフェーズではイメージしやすい ”真下” という言葉を便宜上使っていました。こんがらがってしまった人がいればごめんなさいm(_ _)m
そんなこんなで、
肉離れをしない安全な走りをするために接地位置をパワーポジションラインの延長線上に置くことがわかりましたね!
あとは、パワーポジションのラインに合わせ、
①足を接地する練習
②降り出した足を真下に接地する走りの中での練習
③止まり方の練習等を継続的に続けて怪我のない安全な練習を目指しましょう!
※パワーポジションを揃えるドリルは、今後別の記事で紹介していく予定です。お楽しみに!
⑤まとめ
- 肉離れとはハムストリングスと腱の引っ張り合いでちぎれちゃうこと
- 肉離れの仕組みは、接地位置が前方のため過度に引っ張りあっちゃうこと
- 安全走りは「パワポジションのライン上(仮:真下)に足を接地すること」
- 安全走りの仕組みは、つっかえ棒としてハムを使うよりも筋肉量が多いお尻を使おう
- パワーポジションとは、肩・膝・母指球が一直線に揃い、力が最も発揮しやすい姿勢
最後まで安全走りの記事を読んで頂きありがとうございます!!
今回の記事【肉離れ完全防止】肉離れしないための安全な走り方講座の記事はいかがでしたか?
肉離れの仕組みや防ぐための走り方がわかったのではないでしょうか。
ShoesPicksでは他の記事で【反発と進展】【お尻を鍛えれば足が速くなる理論】などを紹介していますので、ぜひご覧ください。
参照:
・1【肉離れとは 症状や肉離れと見分けが難しいものは?】Media Note 順天堂大学医学部整形学科科学 講師 斎田良和先生 https://medicalnote.jp/contents/180305-003-UK
・2【アスリートが最高のパフォーマンスを発揮できるようにー「筋肉」を研究する元アスリートの挑戦ー 】JUNTENDO SPORTS 順天堂大学スポーツ健康科学部准教授 宮本 直和https://www.juntendo.ac.jp/sports/news/20190730-02.html
・3【ハムストリング肉離れの経験を持つ陸上選手の短距離失踪時における大臀部の筋活動特性ー健側と患側間の差異ー】国士舘大学大学院スポーツ・システム研究家小林https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspfsm/58/1/58_1_81/_pdf/-char/ja
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