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100m前半型後半型1

100m前半型と後半型の人の決定的な違い

100mの後半失速するんです。。

陸上短距離選手であれば誰もが気にする「前半型」「後半型」のお話をしたいと思います。

短距離種目なら100mでも200mでもいいのですが、
「後半の減速(失速)」もしくは「スタートで加速しない」などの自覚がある方は多いと思います。

この悩みを解決するべく、どんな特徴の人が前半型、後半型なのかを明確にし、それぞれどういった対策が必要になるのかを書いていきたいと思います!

①100m前半型と後半型とは?
②100m前半型と後半型の人の特徴
③100m前半型と後半型それぞれの対策
④100m前半型と後半型まとめ

①100m前半型と後半型とは?

100m前半型後半型1

短距離種目において主に100mをケースに前半型と後半型とはまずどういった現象なのか見ていきたいと思います。

トップスピード到達位置

前半型と後半型を見分けるには、トップスピードに到達する距離が前半か後半かという違いがあります。

これは2019年の世界陸上に出場したサニーブラウン選手、小池選手、桐生選手の100mの動画です。

前半は海外選手と差がないスピードで走れているのに、後半失速しているように見え、一気に置いていかれる様子がわかると思います。

この現象を整理すると、

海外選手の方がトップスピード到達位置が後半にあり、日本人選手のトップスピード到達位置が前半にあることが挙げられます。

100m前半型後半型2
出典:陸上.comより。

上図は2016年リオデジャネイロオリンピックのウサイン・ボルト選手、ジャスティン・ガトリン選手、山縣亮太選手、ケンブリッジ飛鳥選手、桐生祥秀選手の疾走速度をグラフ化したもので、各選手のトップスピードポイントを★で表しています。

ボルト選手やガトリン選手のトップスピード到達は70m〜80mの位置にあり、日本人選手のトップスピード位置は50m付近を示しています。

100m前半型後半型3

トップスピードに達した後は共通して減速していることがわかり、トップスピードに到達するのが早いほど減速区間が長く、後半大きく減速/失速しているのがわかります。

これらのことから、

  • 前半型選手

→トップスピードに達するのが早く、減速区間が長くなり、後半に大きく失速している。

  • 後半型選手

→トップスピードに達するのが遅く、減速区間が短くなり、後半大きく失速しない。

という違いがあることがわかりました。

トップスピードと100mのタイムの関係について詳しく理解したい方はこちらの記事も合わせて読むと理解が深まります。

短距離走における、トップスピードとは何か?

②100m前半型と後半型の人の特徴

100m前半型と後半型の違いがわかったところで、それぞれどういった特徴を持っているのか掘り下げていきます。

1.ピッチとストライドの違い

次に、後半の差は何が要因なのか深掘っていきます。

以下は前半〜後半にかけての走速度とピッチ速度、ストライド幅の推移を示したものです。

(2011,早稲田大学大学院,Factors influencing performance of elite sprinters: focusing on the acceleration phase of running)

⚫→オリンピックや世界選手権出場レベルの速い集団(以下Fast群)
△→日本インカレや日本選手権入賞レベルの比較的遅い集団(以下Slow群)

上の3つの図は、
❶走速度(上)
❷ピッチ速度(真ん中)
❸ストライド幅(下)
の1歩目〜18歩目までの推移をグラフ化したものです。

走速度はもちろんステップごとに増加していきます。

ところが、ピッチ速度を見るとほとんどFast群とSlow群で差がないことがわかります。もはやSlow群の方が後半ピッチ速度は上回っているほどです。

一方。

ストライド幅の推移を見ると、後半一気にFast群とSlow群の差が開いていることがわかります。

つまり後半の伸びの差はピッチより、ストライドにある可能性が高いことがわかります。

2.力のベクトル

後半の伸びの鍵はストライドであることがわかりました。
次はその推進力を生み出している力学のどの部分が後半の伸びを左右しているのか見ていきます。

力のベクトルについてです。

軽くおさらいをすると、
人間が地球の地面の上で前に進む場合、上方向の力と、前方向の力を生み出すことが必要でした。(この辺の走りの原理について先に読んでおくと理解が早いです。)

足が速くなる方法より走りの仕組みを考えよう。

基本的に自分でスピードをコントロールできる力学はこの2つしかないので、前半型後半型の選手はこの2つの力をどのように扱っているのかを考察していきます。

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(2011,早稲田大学大学院,Factors influencing performance of elite sprinters: focusing on the acceleration phase of running)

上図はオリンピックや世界選手権出場者のFast群と、日本選手権や日本インカレ入賞者のSlow群を対象に、スタートから40m付近までの1歩〜18歩までの各接地時の地面反力を表したものです。

グラフの中身は、
⚫◯が鉛直(上)方向の力成分
▲△が水平方向(前)方向の力成分

⚫と▲→Fast群
◯と△→Slow群

となっています。

気づいたことなどをわかりやすくするとこうなります
↓↓↓

100m前半型後半型6

Fast群の方が全ての局面で力積が大きいことは一目瞭然ですが、それ以外の点で気づいた点をまとめていきます。

上方向の力についてわかること(上図赤色)
・誤差はあるが、前半〜後半にかけて横ばいに推移

前方向の力についてわかること(上図青色)
・後半につれて力積は減少していく
・後半Fast群とSlow群の差がほとんどない

といったことがこのグラフから読み取れます。

おわかりいただけたでしょうか。

後半の局面、Fast群とSlow群で前方向の力の差はほとんどないんです。

つまり、

前半型と後半型を分けている後半の伸びは上方向の力の有無によって決定されている可能性が高いんです。後半失速/減速する方は上ベクトルの力を維持できていないか、発揮できていない可能性が高いです。

逆に言えば、

前半爆速のスタートダッシュを決める選手は前方向の力が非常に優れていて、なかなか前半加速できない選手は前方向の力が上手く生み出せていない可能性が高いです。

原理を図解すると下のようになります。

(走りの原理を説いている反発と伸展の理論を先に理解しておくとわかりやすいと思います。↓↓↓)

足が速くなる方法より走りの仕組みを考えよう。

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走りの原理を示した反発と伸展理論の図解です。(右上)

そして右上図が後半の局面、既に加速をしている局面の力学を示したものです。(左上)

左の図を見てください。
後半の局面では既に自分が加速している分、前方向への力が既に存在しています。

この状態からさらに前方向への力を生み出そうとすると、地面からの抗力のベクトルが前方向になります。
すると重力に対抗する上方向の力が減少し、「腰が落ちる」「足が流れる」などの現象が起きて後半の失速に繋がります。

また、

2011年早稲田大学大学院の「Factors influencing performance of elite sprinters: focusing on the acceleration phase of running」によると、

水平方向の力の大きさと接地時間には相関があると示されており、
接地時間を短くすることが重要な後半局面において、重要になってくるのは鉛直(上)方向の力の反発力である可能性が非常に高いです。

3.骨格の違い

前半型と後半型を決める要因として、

・ストライド
・上方向の力学
について挙げてきました。

次にどのような体つき、骨格の人間が前半型、後半型なのか見ていきます。

ここでは男女の違いを比べてみようと思います。

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日本陸上競技連盟バイオメカニクス研究班報告書より

上図は2007年の世界陸上大阪の男女100mにおけるトップスピード到達点を集計したものです。(左:男子100m、右:女子100m)

2つを比べると、
男性の方がトップスピードに到達する距離が長く、女性の方が短いことがわかります。

このデータだけでも、
比較的男性の方が後半型、女性の方が前半型の傾向があることがわかります。

ですので、男女の骨格の違いを例に前半型と後半型の骨格の違いを見ていきましょう。

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上図が男性と女性の骨格を簡易化した図です。
男性の方が骨盤がまっすぐなのに対し、女性の方が骨盤が前傾しています。

**女性がなぜ前傾しているか**
妊娠するかしないかが主な原因として考えられ、赤ちゃんをお腹の中で受け止めるためにお腹まわりに空間を作っています。そのため、恥骨が引っ込んでいるように骨盤が形成され、前傾に傾いているんです。

**男性がなぜまっすぐか**
歴史的には、男性は動物の狩りなどで長時間歩いたり走ったりしていたため、地面にまっすぐに力を伝えて重力に対抗しやすい骨格になっていると言われています。

  • 前半型の骨格

骨盤が前傾している方が、股関節の伸展がしやすくなり、水平(前)方向の力が優位になりやすく、前半の加速がスムーズな体つきです。

  • 後半型の骨格

骨盤がまっすぐな方が力のベクトルがまっすぐになり、鉛直(上)方向の力が優位になりやすく、後半も走れる体つきです。

③100m前半型と後半型それぞれの対策

前半型、後半型で
・ストライド
・力のベクトル
・骨格
にそれぞれ特徴があることがわかりました。

これを踏まえてどういった対策が必要になってくるのかまとめたいと思います。

前半型の人

前半型で後半の伸びに課題のある方向けのセクションです。

後半伸びずに失速/減速する主な原因は

  • ストライドが伸びない
  • 鉛直(上)方向の力が維持or発揮できていない
  • 骨盤が前傾傾向

といったことが考えられます。

主な対策としては、しっかり反発動作の基本を押さえることです。

接地時に骨盤をまっすぐに安定させる筋肉を整え、反発の動きに活かしていく練習が必要になります。

まず反発って何だ?どんな原理、仕組みで反発を得られるのか?といったことがしりたい方はこちらに進んでください。

「反発」をもらう走り方の原理とコツ〜陸上短距離選手向け

原理が理解できていて、具体的にどういった練習やトレーニングが必要なのか?という方はこちらに進んでください。

反発を受ける走り方〜練習トレーニングとドリル編

後半型の人

後半型で、前半の加速に課題感がある方向けです。

前半加速できない主な原因は

  • 前方向の力がうまく発揮できていない
  • 股関節が上手く伸展していない
  • 骨盤が後傾ぎみ

ことが挙げられます。

そもそも、トップスピード到達が遅い方が100mのタイムも上がるという説もあるので、改善する必要があるかはわかりませんが、、、、
↓↓↓↓
「短距離走における、トップスピードとは何か?」

短距離走における、トップスピードとは何か?

強いて言うなら前方向の力を発揮する股関節の伸展能力を向上させることが必要です。

具体的な練習トレーニング法については今後記事化するつもりですが、原理についてはこちらに進むと理解が深まると思います。(たびたび出てくる反発と伸展の理論についてです。)

「足が速くなる方法より走りの仕組みを考えよう。」

足が速くなる方法より走りの仕組みを考えよう。

④100m前半型と後半型まとめ

いかがでしたか?

後半伸びない!!後半失速する!減速する!という方がほとんどだとは思いますが、ぜひこの記事を参考に解決していっていただけたらと思います。

①前半型と後半型とは?
→トップスピードの到達位置が前か後ろかどうか。

②前半型と後半型の特徴
1.ストライドが伸びるか伸びないか
2.上ベクトルの力が発揮/維持できるかどうか
3.骨盤の傾きがまっすぐか前傾か

③100m前半型と後半型それぞれの対策
1.前半型の人
→反発の基礎を会得しましょう。

2.後半型の人
→股関節の伸展能力を高めましょう。

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