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「腿上げのイメージのまま走ってはいけない???実は多くの人が勘違いしている「腿上げ」のヒミツ

 

 

1.「腿上げ」とは

2.「腿上げ」に対して良く起こる勘違いとは?

3.「腿上げ」の動作、意識を走りに取り入れてはいけない理由

 

 

 

陸上の最も基礎的な練習である「腿上げ」。陸上関係者の方なら必ず1度はやったことがあるんじゃないでしょうか?今回はそれぐらい基礎的な「腿上げ」について話していきたいと思います。

「腿上げ」は基礎中の基礎の練習のうちの一つで、陸上関係者からすると準備運動の延長と言えるぐらい毎日触れ合う練習になります。「腿上げ」にはフォームの改善など様々な効果があります。

しかし実はのところ、陸上選手の多くの人が「腿上げ」という練習に対して誤った解釈をしてしまっていて、練習がマイナスに働いてしまっていることも少なくありません。「腿上げ」の基礎のおさらいと、よくある勘違いを皆さんに紹介していきたいと思います。

 

①「腿上げ」とは?  

→腿上げとは、その場で片足の膝を高く上げ、交互に空中で入れ替える動作を繰り返す、陸上の基礎練習です。この時、腕振りも同時に行います。この練習は、陸上関係者なら誰もが行う基礎練習として、初心者から代表選手まで幅広い人が行なっている練習ですね。足が速くなるための第一歩は、この腿上げから始まります。

 

実際に腿上げを見てみよう!

動画は、100m日本歴代3位の記録(10.00/2019年時点)を持つ山縣選手の腿上げです。素早く、大きく、ブレないですね。芸術的なフォームです笑

皆さんもこの山縣選手のような腿上げのフォームを見本として教えられ、日々練習しているのではないでしょうか?

 

②「腿上げ」に対してよく起こる勘違いとは?

ここからは「腿上げ」によくある勘違いについて話していきたいと思います。

 

腿上げのイメージのまま走ってはいけない

実は、腿上げの動作・意識をそのまま走りの中で行ってしまうと、最もスピードの出る理想的なフォームができなくなってしまいます。その結果、足が速くなるどころか、タイムの悪化や怪我につながってしまいます。

ここでいう腿上げの動き・意識というのは以下のことを言います。

1.膝を意識的に高く上げようとする

2.足の切り替えを意識的に速くして地面を押し込む

3.設置する軸足をまっすぐにする

上記三つの動き・イメージを走りの中で無理やり行ってしまうと、最もスピードの出る理想的なフォームから離れてしまいます。その結果トップスピードの低下や肉離れ、関節炎などのリスクにつながってしまいます。

腿上げからの流しなどの練習の時、腿上げの動きをそのまま走りの中に意識して走っている方は多くいらっしゃると思いますが、実はやってはいけないのです。

そして、11秒前半から10秒台になかなかは入れない選手の多くが、このような勘違いをしてしまっているように感じます。

“え?腿上げって、足が速くなる練習なんじゃないの?”

“それなのに足が遅くなる?どういうこと?”

と混乱してしまう方が多いと思いますので、整理しながら説明していきます。

 

③「腿上げ」の動作・意識を直接走りに取り入れてはいけない理由

 

では「なぜ腿上げの動作・意識を直接走りに取り入れてはいけないのか?」について解説していきたいと思います。

 

そもそも「腿上げ」の動きでは走りを速くすることはできない!

まず、この話題に触れるためには「脚が速い」とはどういう状態なのか考える必要があります。
脚が速い状態というのはストライド(歩幅)とピッチ(回転数/1秒)の値が高い状態です。
簡単に言えば、長い歩幅で速く足を回転させれば速いということですね。

このストライドとピッチを出すために最も必要な要素は「反発と伸展」です。ストライド=反発×伸展と考えることができます。この反発と伸展は、この解説サイトが掲げる、最も根源的な「足が速くなる要素」です。このサイトの解説は基本的にこの「反発と伸展」によって足が速くなるという前提で解説が進んでいくので、こちらの記事を是非とも読んでみてください⇨『「足が速くなる方法」ではなく、「足が速くなる仕組み」を考えよう。』

この「反発と伸展」という技術を直接的に高めなければ脚が速くなることはありません。
この原点に立ち返った時、腿上げには動作が含まれません。
なので、「腿上げ」の練習でできる動作をそのまま走りの中に落とし込んでも、「反発と伸展」の技術には直結せず、速さには結びつかないということです。

実際、「腿上げ」の練習ではピッチも遅いですし、ストライドを広げるための練習もありません。

余談にはなりますが、脚の速さは接地時間と関係性があることもわかっています。

気になる方はこちらの記事も読んでください→ピッチ×ストライドはウソ!?疾走速度と設置時間との関係性について

「腿上げ」と走りの違いは、以下の写真からも分かると思います。
以下は「腿上げ動作」と、全力走行中の動作の比較になります。以下写真は、力を加えられる唯一のタイミングである『地面に足が設置した瞬間』を切り取っています。

地面に接地した瞬間の違い

腿上げ

走り

 

写真の違いからも分かるように、「腿上げ」と「走り」の根本的な動きは全く異なっています。なので、「腿上げで得られるもの」と「走りに必要なこと」のギャップをしっかりと抑えておく必要があります。

その点で、「スピード=反発×伸展」という我々の考える前提から考えると、腿上げには反発動作、伸展動作を意識する動きはなく、これらの動きを走りに落とし込むと結果的にスピードが大きく低下するわけです。このような走りをすると、スピードを上げるために不足しているストライドを無駄な力を使って無理やり押し込んで補おうとします。すると足の甲や膝、ハムストリングや前腿にダメージがたまり肉離れや炎症の原因となります。

 

③腿上げは何のための練習か?


まず初めに考えなければいけないのは、「腿上げは何のための練習なのか?」ということです。練習には目的があり、目的に寄り添った練習をしなければ全て逆効果になってしまいます。腿上げの効果を最大限高める為、また勘違いを解消し効果の悪い練習をしなくて済むように、一緒に考えていきましょう。

腿上げの目的

「腿上げ」を行う大きな目的は、「ストライドを伸ばす事ではなく」以下の3つです。

①全身の筋肉の連動を高めること

腿上げの最も大きな目的は「全身の筋肉の連動を高めること」でしょう。腕と足の動きや(右足が出た時は左手が前に出る)、足の切り替えのタイミングなど、必要最低限の連動性を高め、フォームを整えるための練習です。これは初心者と熟練者を見比べると、その効果がすぐにわかります。熟練者の腿上げフォームは、腕と足、空中での足捌きなどが全て連動しており、無駄のないフォームになります。このような基礎的な部分を矯正するのが腿上げの目的です。

②股関節、肩甲骨周りの可動域を広げること

腿上げにはストレッチを行う目的もあります。アップの段階などまだ体が本調子でない場合、筋肉が固まり関節周りの可動域が小さくなっています。膝を大きく上下に動かしたり腕振りを意識したりして行うことで、これらの関節の可動域を大きくする目的があります。

③体幹を締めること

速く大きく足と腕の入れ替えを行う腿上げでは、体幹を締めることが意識されます。大きく早く腿上げを行おうとすると、体幹を締めなければ行うことはできません。実際に走る時など大きく早く体を動かすときに無駄な体のブレが起きないようにするのが目的です。

腿上げはこれらの目的を満たすために適した動きであり、ストライドを伸ばす上で最適な動きではありません。よって腿上げの動き/イメージを全力走、ストライドに結びつけようとしてもいい結果は生まれず、逆に怪我の引き金になってしまうのです。

ここまで読んでくださった皆様の多くはこう思っていらっしゃると思います。

「じゃあ、ストライドを上げるための練習って何をやればいいだよ?」

結論から言うと、

ストライドを大きくしトップスピードを上げるのに必要なのは「乗り込み」という技術です。

「腿上げのイメージで走りがハマる」という方もいますが、こういうタイプの方は腿上げ以前に、「乗り込み」をマスターしています。

次回の記事ではこの「乗り込み」について書いていきます。

 

まとめ:腿上げは目的を抑えればいい練習になる


ここまで、いかにも腿上げが悪みたいな書き方をしているようにも見えてしまったと思いますが、そうではありません。

腿上げは目的を抑えればものすごくいい練習になります。ただし目的を誤り、走りに直接的に取り込んでしまうとマイナスの効果が出てきてしまいます。

そのために、腿上げは直接的にはスピードに結びつかないということ割り切って考えてください。あくまで基礎的な練習であり、よりスピードを上げるためには腿上げではないスキルと練習が必要になります。

腿上げにできることは以下のことであることを割り切り、それ以外の目的での練習は行わないようにしましょう。

 

 

腿上げの目的:

1手足の連動強化によるフォーム矯正

2関節の可動域を上げる

3体幹を強化する

 

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